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2022.01.20
第5のステップ 試行錯誤で磨き上げるストーリー

 みなさん、こんにちは。

第1~3のステップを通じて、自分たちは何者か、強みは何か、どういう存在でありたいか、を考えてきました。第4のステップでは、ブランドをデザインするプロ、「デザイナーさんとの付き合い方」についてお話ししてきました。

今回は、第5のステップ「試行錯誤で磨き上げるストーリー」についてお話ししたいとおもいます。

 

1.ブランドの対象物を、文字やイメージで表してみる

 商品やサービス、企業には「コンセプト」が存在しています。ブランディングの第一歩は、対象物の「コンセプト」を作ることから始めましょう。

 商品・サービスの場合、一般に「コンセプトシート」と呼ばれるものを作ります。これは、仕様書の基本ともなります。内容としては、商品・サービスの①名称、②短いコピー(どういうものかを端的に表現した文章)、③対象者に対するメリット、どのようなニーズを充足するものか、④自社の強み(技術等)を活かした特徴、などを記載するのが一般的です。これらをシンプルに箇条書きにして、商品・サービスのイメージ写真やイラストも挿入してA4の1枚のシートに仕上げます。これで出来上がりです。

B to B企業でも、オリジナルの技術、成分やサービスをブランド化の対象とするケースも増えてきていますが、同じように「コンセプトシート」を活用できます。ご当地ならではの素材や成分、サービスなどを提供する地域ブランドも、技術ブランドと捉えることができそうです。

 一方、コーポレートブランドを考えるときは別のシートを用います。ここでは、経営デザインシートを単純化して考案したシートを一例としてお示しします。上部に今後(左図では、2030年を例にしています)予測される事業環境等をもとに、強みを活かして、どういう存在になりたいかを記載するものです。第1~3のステップで積み上げてきたプロセスを通じて、アウトプットしてみましょう。

 

2.試行錯誤で磨き上げる

 コンセプト作りで注意したいのは、一時的な流行、あるいは競合品を意識した、(実に)細かい差別化に気を取られすぎてしまうことです。迷い始めたら「根っこ」に立ち返ってください。自社のアイデンティティにまでさかのぼって、この商品・サービスを通じて提供したい価値は何なのか、じっくり考えてみてください。

コンセプトは作るだけでなく、磨き上げましょう。第2のステップで触れた外部の目を取り入れたリサーチの手法で、検証してみましょう。この顧客に対する検証プロセスが、恐ろしい反面、最もわくわくするので、私はやりがいを感じてしまいます。

 

3.想いを形に、ストーリーに載せて

 デザイナーさんは、コンセプトを視覚的に表現するプロです。第4のステップで触れたように、デザイナーさんとの間で、「根っこ」の理解を徹底的に共有することで、想いを形にしてゆきましょう。

 ブランドは、コンセプトが、目に見える形となり、伝わることで、確立されてゆきます。ブランドを伝える手段として、ストーリーが注目されています1)。例えば、開発担当者の心の動き、転機となった出来事が、印象的なブランドストーリーにもなりえます(世界的な絆創膏のブランドの愛にあふれる誕生秘話は、なんとも心に残ります)。さて、どんなブランドストーリーをつむぎましょうか、デザイナーさんとのクリエイティブな共同作業を楽しみましょう。

以上で、試行錯誤で磨き上げるストーリーについてのお話は終わりです。

次回は最終回、「第6のステップ ブランドの中身は」をお届けします。

どうぞお楽しみに。

 

参考資料

1) デービッド・アーカー著・阿久津聡 訳[2019]「ストーリーで伝えるブランド」ダイヤモンド社

  世界的に有名な企業のブランドストーリーの解説や、どのようなストーリーが効果的なのかなどの解説がなされています。少々専門的ですが、ご興味がある方は、参考にしてみてください。

 

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